グリッティパレス,ラグジュアリーコレクションホテル,ヴェニス
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織工と仕立屋
洗練されたファッション
Tessitura Bevilacquaの物語はベニスの職人の伝統の中心に織り込まれており、ベヴィラクア家とベニス織物との関係の始まりは1499年まで遡ります。
ベニス中心部のファッブリ通りのマスターテーラー、フランコ・プッパトの60年におよぶキャリアを特徴づけているのは、情熱、才能、そして強い意志です。イタリア、スコットランド、イングランドの最高級の素材を使用して、プッパトは「エレガントなオーダーメイド」をモットーに、あらゆるものを均質化し、創造性を抑圧する横並び思考や画一化の波の中で、自らの仕事を正しい道へと進めています。
Tessitura Bevilacqua
ベニス織物の伝統
Tessitura Bevilacquaは、セレニッシマ絹織物学校から回収された18世紀の織機を使い、昔ながらの技法やデザインに現代性を融合させ、ベルベット織物やダマスク織ルネッサンスデザインを作り上げています。
Tessitura Bevilacqua
情熱、プロセス、正確さ
工程は難易度が高く複雑ですが、この仕事で最も満足を感じるのは、自分の作品を振り返り、目の前の完成した生地を見て、それまで頑張った甲斐があったと思えたときです。
この仕事では学びをやめることはありません。現在私は「ソプラリッツォ」という技法を学んでいます。極めて複雑で時間のかかる手作業で行うベルベットの工程の1つで、習得に何年もかかります。18世紀に作られた18台の織機を使い、手作業で行います。以前はベニス共和国の絹織物工業組合が所有していた織機です。
ジュリア・インチピニ、織物職人
Tessitura Bevilacqua
現在の世界において職人技が重要なのはなぜでしょうか。
Tessitura Bevilacquaは、ベニスにとって何世紀にもわたり極めて重要であった伝統の証そのものです。1500年代のベニスには織機が6,000台もあり、多くの人がベルベットの生産に携わっていました。あらゆるものが大量生産されるようになった現代では、愛情、知恵、そして経験をもってユニークな作品を作ることができることは特に貴重です。
アルベルト・ベヴィラクア、CEO
Tessitura Bevilacqua
もし織物職人になっていなければ、他にどんな工芸品を作っていたと思いますか?
織物職人になっていなかったら、生体医工学の世界に進んでいたと思います。その分野にも情熱を持っていました。でも、アパレル企業であるベヴィラクアでインターンとして働き、この仕事を体験したときに考えが変わりました。すぐに夢中になり、それからは振り返ったことはありません。
ジュリア・インチピニ、織物職人
フランコ・プッパト
完璧な仕立て
フランコ・プッパトのスーツの特徴は、顧客心理への明確な共感と理解だけでなく、緻密に計算された数学的手法です。その見事な腕前により、イタリアの仕立業界のオスカーとされるアービターアワードを受賞しました。
フランコ・プッパト
お仕事の中でどの工程がお好きですか?
スーツの原点である生地の裁断は、クライアントの体に合わせた服が誕生し、発展することを表しているので、いつも魅了されてしまいます。私の師匠から受け継いだお気に入りのテクニックは、三角法を使ったスーツ作りです。数学的なアプローチにより、若い職人でもほぼ即座に職人としての自信を持ち、芸術的な表現力を追求することができます。
フランコ・プッパト
テーラーの旅
自分が仕立てた服はどれも自分の子供のようなもので、それぞれに独自のストーリーがあります。以前ベニスからパリまで自転車で旅行したとき、お客様がいろいろなところにいるので、採寸のため何人かの顧客のところに立ち寄りました。またあるときは、ベニスからインスブルックまで自転車で旅しているときにお客様にスーツを届けたこともあります。
フランコ・プッパト
創造性の街
靴職人や金細工職人でも、修復家でも、職人は誰もがその街の文化に自分なりの貢献をし、手先の技術を磨くと同時に精神を鍛えています。私の場合は、仕立てを通じて芸術的な完璧さを追求し、それぞれのスーツの持ち味を最大限に引き出さなくてはなりません。
ベニスは、今までもそしてこれからもずっと、文化的にも芸術的にも職人技の世界が集まる街であることに変わりありません。この土地でインスピレーションを受けずにいることはできません。ベニスの光は、日常生活を豊かにしてくれる感情や感覚を与えてくれます。
リノ・ランドー
Atelier Fortuny Venezia 創業者
スペインの芸術家でありでデザイナーでもあったマリアノ・フォルトゥーニは、ファッション、テキスタイル、アートなどの分野で創造力を発揮しました。人生の大半を妻とともにベニスで過ごし、デルフォスドレスのような革命的なデザインを生み出しました。彼の死後、彼の邸宅 (現パラッツォ フォルトゥーニ) は、彼の生涯の仕事を紹介する博物館になりました。そこに展示されていたフォルトゥーニの遺産からインスピレーションを受けたベニスのリノ・ランドーは、フォルトゥーニの作品を解読して分析し、彼の工房を再建してフォルトゥーニの物語の継承者となりました。そして、彼の優れた技術を保存し、秘密を守り、新しい世代に伝えたのです。
リノ・ランドー
あなたの工芸品における伝統と革新は、あなたにとって何を意味しますか?
私の仕事の秘訣は、伝統を守りながらも常に新しいものを取り入れることです。伝統はクリエイティブの錨のようなもので、それがなければ道を見失ってしまいますが、常に新しいことを取り入れなくてはなりません。時が流れ、原材料が変わり、人々の好みも変化するため、これは必ずしも簡単なことではありません。現代の消費者は自分の好みに合う完璧な結果を求めています。ですから私たちは、自分のインスピレーションに忠実であり続けながら、こうした現代的な期待にも応えるという綱渡りをしているのです。
リノ・ランドー
あなたが作ったものの中で、あなたにとって特に重要だったものはありますか?
私たちが研究に多くの時間を費やしたのは、フォルトゥーニの、いやむしろ彼の妻エンリエッテのシルクプリーツでした。プリーツの波打つようなドレスのスタイルを再現するのに何年もかかりました。ついに完成したときは、スタジオで「やった!」と歓声が上がりました。2〜3年ごとに技術を向上させ、それまでの手法が古代のものに見える程度まで技術を一新しています。
リノ・ランドー
あなたの作品の中で、最も複雑でより注意を必要とするものは何ですか?
私たちの作品の多くは、さまざまな複雑な工程を必要とします。たとえば、シルクのベルベットにスクリーンプリントを施す場合、デザインによっては5〜6の工程が必要です。各工程で、前のフレームにもう1つフレームを重ね、新しい色や新しい模様を追加していきます。
もうひとつの例は、シルクランプです。1枚のシルク生地から始め、時間をかけて湿らせて、乾かして、折り目を1本もつけることなく、徐々に希望の形に整えていきます。